映像のフレームレートとは? 初心者向けに解説!

映像制作に携わったことがある方なら、フレームレートという言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。フレームレートは、映像の質感や滑らかさに大きく影響する重要な要素です。しかし、初心者の方にとっては少しわかりにくい概念かもしれません。

本記事では、フレームレートについてよくある疑問を解消すべく、基礎知識から未来まで詳しく解説します。フレームレートについて改めて理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

フレームレートの基礎知識

フレームレートの定義と単位

フレームレートとは、1秒間に表示される静止画(フレーム)の数のことを指します。例えば、1秒間に24枚のフレームが表示される映像は、フレームレートが24fpsということになります。fpsはフレームレートの単位で、Frames Per Second(1秒あたりのフレーム数)の略称です。

フレームレートが映像に与える影響

フレームレートは、映像のなめらかさや質感に大きく影響します。一般的に、フレームレートが高いほど滑らかで自然な映像になります。これは、人間の目が1秒間に24枚以上のフレームを連続して見ると、静止画の連なりではなく動いている映像として認識するためです。

一方、フレームレートが低いと、コマ落ちしたようにカクカクした印象になります。ただし、低フレームレートにも意図的に用いることで効果的な表現ができる場合があります。例えば、8fpsや12fpsの低フレームレートを使うことで、昔の映画のようなレトロな雰囲気を演出することができます。

代表的なフレームレートの種類と特徴

では、実際の映像制作で使われているフレームレートにはどのようなものがあるのでしょうか。よく目にするフレームレートとその特徴を見ていきましょう。

用途代表的なフレームレート
映画24fps
テレビ(日本・北米)30fps(正確には29.97fps)
テレビ(欧州・豪州)25fps
Web動画30fps、60fps
ゲーム30fps、60fps
VR90fps、120fps

テレビ放送で使われるフレームレート

テレビ放送では、主に30fpsと25fpsのフレームレートが使われています。これらのフレームレートは、テレビ放送の規格と深く関わっています。

NTSCとPAL

日本や北米などで採用されていたNTSC(National Television System Committee)方式のアナログテレビ放送では、30fps(正確には29.97fps)が使われています。一方、ヨーロッパや豪州などで採用されているPAL(Phase Alternating Line)方式では、25fpsが使われています。

NTSCとPALは、テレビ放送の色信号の伝送方式の違いを表す規格です。簡単に言うと、NTSCは60Hzの電源周波数に合わせて開発された規格で、PALは50Hzの電源周波数に合わせて開発された規格です。

デジタル放送にはもはや関係の無い伝送方式ですが、テレビやレコーダー・プレーヤーなど広く普及した製品の対応が分かれていることなどから、現在でも国によって主流となるフレームレートが異なっています。

29.97fpsの理由

NTSCの30fpsというのは、正確に表記すると29.97fpsです。これはテレビ放送がカラー化する際に白黒時代と同じ30fpsを使ったところ、映像に色の情報が載ってデータ量が増えたぶん映像と音声が1時間に3.6秒ズレてしまったために採用されました。映像フレームを定期的に間引くことによってそのズレを解消したところから歴史が始まっています。

ドロップフレームとノンドロップフレーム

29.97fpsに関連する重要な概念として、ドロップフレームとノンドロップフレームがあります。これらは主に、タイムコードの管理方法に関わる概念です。

ドロップフレームとは

ドロップフレームとは、30fpsと29.97fpsのわずかな差を調整するために、一定間隔でフレームを間引く(ドロップする)方式のことです。具体的には、10分ごとに2フレーム分のタイムコードがスキップされます。これにより、タイムコードと実際の時間のズレを最小限に抑えることができるのです。

ノンドロップフレームとは

一方、ノンドロップフレームとは、フレームの間引きを行わない方式のことです。つまり、29.97fpsで撮影された素材をそのまま使用し、タイムコードと実際の時間のズレを許容するわけです。

使い分けのポイント:YouTube・映画とテレビ放送

ノンドロップフレームは、時間コードと実際の時間が厳密に一致する直感的な方式です。YouTubeや映画制作では、一般的にノンドロップフレーム方式が採用されています。

YouTubeでは、アップロードする動画のフレームレートは、撮影時のフレームレートと一致している必要があります。多くのYouTube動画は、30fpsまたは60fpsのノンドロップフレームで撮影・アップロードされています。映画制作では、24fpsが標準的なフレームレートとして使われており、この場合も時間コードはノンドロップフレーム方式が一般的です。

一方、テレビ放送では主にドロップフレーム方式が使われています。アメリカのNTSC規格では、フレームレートが29.97fpsと一定でないため、一定時間ごとに特定のフレームを「ドロップ」(カウントしない)することで、時間コードと実際の時間を一致させています。具体的には、10分ごとに2フレームがドロップされるのが一般的です。これにより、放送スケジュールと実際の時間を正確に同期させることができます。

このように、ノンドロップフレームとドロップフレームは、制作の目的や用途に応じて、適切な方式を選択することが求められます。

スマートフォンとビデオカメラでの撮影

近年、スマートフォンのカメラ性能が向上し、高品質な動画撮影が可能になってきました。多くのスマートフォンは、30fpsまたは60fpsでの撮影に対応しています。これらのフレームレートは、一般的にノンドロップフレーム方式で記録されます。

スマートフォンで撮影した動画を編集する際は、ノンドロップフレームであることを念頭に置く必要があります。特に、テレビCMやDVD制作などドロップフレームが求められる用途で使用する場合は、編集ソフトでドロップフレームに変換する必要があるでしょう。

一方、ビデオカメラの多くは、ドロップフレームとノンドロップフレームの両方に対応しています。撮影時にどちらを選択するかは、撮影した動画の用途によって決まります。

例えば、映画制作を目的とする場合はノンドロップフレームを、テレビ番組の撮影ではドロップフレームを選ぶのが一般的です。ただし、最近は放送局でもノンドロップフレームの動画を受け入れるケースが増えているので、確認が必要です。

スマートフォンやビデオカメラで撮影する際は、フレームレートだけでなく、ドロップフレームとノンドロップフレームの違いも理解しておくことが大切です。用途に合わせて適切な方式を選択することで、より円滑な編集作業やメディア展開が可能になるでしょう。

高フレームレート映像の可能性

近年は、ゲーム映像を中心に60fpsや120fpsの高フレームレート映像が増えてきています。より没入感の高いゲーム体験を求めるユーザーにとって、高フレームレートは大きな魅力となっています。

高フレームレートの映像は、非常になめらかで自然な動きを再現できます。特にスポーツ中継やアクション映画など、動きの速い映像との相性が良いでしょう。また、スローモーション映像を表現したい場合は、120fpsや240fpsあるいはそれ以上のフレームレートで撮影し、それを30fpsや60fpsで再生することによりゆっくりとした映像になります。

さらに、高フレームレート映像は、バーチャルリアリティ(VR)やアクションカメラの分野でも注目を集めています。VRではユーザーの没入感を高めるために、できるだけ自然でスムーズな映像が求められます。そのため、90fpsや120fpsといった高フレームレートが採用されることが多いのです。

YouTube上の動画に目を向けてみると、60fpsの動画が増えてきていることがわかります。YouTubeは2014年から60fpsでの動画再生に対応しており、ゲーム実況や音楽ライブ、スポーツ映像など、高フレームレートの恩恵を受けられるコンテンツが数多くアップロードされています。

YouTubeで60fps動画を視聴するには、動画設定で「1080p60」や「720p60」といった、60fpsに対応した画質を選択する必要があります。また、視聴者側のデバイスやインターネット回線のスペックが十分でないと、スムーズな再生ができない場合があるので注意が必要です。

高フレームレート動画の配信は、YouTubeに限らず今後さらに拡大していくと予想されます。5Gの普及により、高速・大容量のデータ通信が可能になれば、より多くのユーザーが高フレームレート動画を快適に楽しめるようになるでしょう。クリエイター側も、高フレームレートを活用した新しい表現に挑戦していくことが期待されます。

ただし、高フレームレートの映像はデータ量が大きくなるため、撮影機材や編集環境、視聴者側のデバイスにも高いスペックが求められます。コンテンツ制作者は、自分のターゲットとする視聴者層のインターネット環境を考慮しながら、適切なフレームレートを選択することが大切です。

まとめ

フレームレートは、映像の見え方や質感に直接影響を与える重要な要素です。映像コンテンツを視聴する際に、フレームレートの違いを意識してみると、新しい発見があるかもしれません。

本記事を通じて、フレームレートについての理解が深まり、映像の世界により興味を持っていただければ幸いです。それぞれのフレームレートが生み出す独特の表現を、ぜひ楽しんでみてください。