プロ御用達!MAスタジオ収録で失敗しないために準備しておきたいこと

映像作品を制作するうえで欠かせない「MA(エムエー)収録」

音声などを録音して映像に挿入したいなと考えたときに、よく目にする言葉です。

「映像に合わせて高品質なナレーションを入れたいけど、初めてのMAスタジオは不安……。」という方も少なくないですよね。

MA収録の知識があれば、経験がない初心者の方や慣れていない方でも、その不安はすぐ解消できます。

この記事では、初めてMAスタジオを利用する方に向けて、失敗しないために押さえておきたいポイントを中心に、MAスタジオ収録についてわかりやすく解説します!

MAの意味を知っておこう!

「MA」とは、和製英語のMulti Audio(マルチオーディオ)の略称です。

映像作品(テレビ、CM、映画、ドキュメンタリーなど)に、セリフ、音楽、効果音(SE)などを加えて調整したり、複数の音声トラックを適切なフォーマット(テレビ用、映画用など)にまとめる作業のことを指し、業界では原則「MA(エムエー)」と略します。

MAにおいて一番重要なのは、映像に後からナレーションや音声を追加する作業といっても過言ではありません。

MAスタジオとは?

MAスタジオとは、MA作業を一貫して行う専門スタジオです。

クライアント立会い可能なコントロールルームと収録ブースを備えており、ポストプロダクションスタジオ、ポスプロなどとも呼ばれています。

MAスタジオの収録では、基本的に「立ち会い収録」「リモート立ち会い収録」「おまかせ収録」から選ぶことができます。

ただし、スタジオによっては対応できないものもあるため、事前にスタジオのウェブサイトなどで確認しておきましょう。

【MAスタジオの基本構成】

・コントロールルーム:ディレクターやエンジニアが指示を出したり、利用者やクライアント(利用者側の)が立ち会うことができる部屋です。

・収録ブース:ナレーターや声優が音声収録するために完全防音された部屋です。

【MA収録におけるスタッフの役割】

 ・ディレクター:クライアントからのコンセプトをナレーターにわかりやすく伝えたり、修正のディレクションを行なったり、収録の際に円滑に進行する役割があります。

 ・エンジニア、ミキサー:音声の収録、調整、整音、編集を行なう技術スタッフ。収録に関する幅広い知識や技術を駆使し、音声制作をサポートします。スタジオによっては、エンジニアがディレクターを兼務している場合もあります。

・ナレーター:映像作品に声を吹き込み、より映像を生き生きと魅せる音声のプロです。

MA収録が必要になるのはどんなとき?

①映像に合わせてナレーションや音声を後から録音する

②収録した音声からノイズを取り除き、専門的な技術で音声をブラッシュアップする

③BGMや効果音を追加する

 特に映像に挿入する音のクオリティーを上げたい場合は、MAスタジオでの収録が断然オススメです!

利用者自身やクライアントの立ち会い収録は?丸投げでもOK?

「スタジオ収録に自分も立ち会いたい」

「クライアントに立ち会い参加の意向がある」

「スタジオ側で全部やってほしい」…etc

どんな形で収録に携わるかは収録スタイルによって変わります。

自分の条件に合う方法で、万全に収録できることがMA収録の利点でもありますね!

【主な収録スタイル】

<立ち会い収録>

スタジオでのナレーション収録に直接立ち会うことができる。

利用時のメリット:リアルタイムでの修正・ディレクション(指示)ができ、スケジュール管理もしやすく、スムーズな収録が行える。

<リモート立ち会い収録>

ネット回線を利用し、ナレーション収録にオンラインで立ち会うことができます。

利用時のメリット:スタジオに行く手間が省けます。遠方やスケジュールの都合でスタジオに来ることが難しい場合など、世界中どこからでも収録に立ち会うことができ、リアルタイムでの修正・ディレクションが可能です。

<おまかせ収録>

ナレーター選定後、スタジオでの立ち会いはせず、MAスタジオに収録から納品まで一貫して任せることができます。

利用時のメリット:立ち会い不要なので、その他の作業に時間を回せます。忙しく時間が取れない方には便利な方法です。スタジオによっては比較的リーズナブルな料金で収録することができます。

MA収録の際に準備するもの

【MA収録に使うファイルやデータは事前に送信】

MA収録に使う映像、ナレーション原稿、OMF・AAFデータは、事前にオンラインストレージなどを使用し、メールでスタジオに送ってください。映像や原稿にタイムコードがない場合や、ファイルについてわからないことがある場合は、スタジオに相談しましょう。専門スタッフが丁寧に対応してくれるので安心して相談してくださいね!

【映像ファイル】

・MOV(.mov)形式(H.264またはApple ProRes、Avid DNxHD)

MP4(.mp4)形式(H.264。mp4ファイルは、MOVなどの他形式のファイルに変換して対応するスタジオが多いため、事前に確認しておきましょう。)

・推奨フレームレート:29.97

映像自体にタイムコードが入っているものがあると、収録をする際に助かります。

予備知識ではありますが、MA収録で使用する映像のことを業界用語で「オフライン」、映像自体にタイムコードを挿入することを「キャラ入り」といいます。突然この言葉を出されたときでも理解できるように覚えておくと良いですね!

【ナレーション原稿(タイムコード入り)】

MA収録に使用するナレーション原稿を準備する際には、ナレーション挿入の目安位置をタイムコードで指示しておきましょう。

例)00:15 NA「〜〜です。」

  00:20 NA「早速〇〇を見てみましょう。」

ここ数年で横書き原稿がとても多くなりましたが、MAナレーション原稿、吹き替えなどの台本は縦書き推奨です。

その理由として、目で映像を見ながら文字を追う際に、縦書きの場合は上から下に繰り返し読むため、映像とナレーション原稿の目線が平行を保つことができ、タイムラグが起こりにくいとされているからです。逆に、横書きの場合は下へ読んでいくため、どんどん目線が下がり、文章の改行でタイムラグが生じてしまうためです。

原稿準備のポイントとしては、原稿を印刷し、必要な部数を用意すること。デジタルで共有することも効率は良い原稿の余白には、映像のコンセプト、希望する声のトーンや雰囲気、地名や名前などの固有名詞の読み仮名を記載しておくと、収録の際にNGを減らすことができます。 特に固有名詞においては、読み間違え厳禁なので記載が必須です。

【OMFまたはAAF形式のファイル】

OMFまたはAAF形式のファイルとは、主にBGMやガイドナレーション(仮ナレーション)などが入ったデータのことです。ガイドナレーションがあると、テンポやタイミングが掴みやすくなります。音源トラックにプラグインを使用している場合は、事前にスタジオへ確認しておきましょう。

・OMF(.omf)に対応している動画ソフト:Adobe Premiere Proなど

・AAF(.aaf)に対応している動画ソフト:DaVinci Resolve17以降、Adobe Premiere Proなど

・ 推奨データ形式:ビットレート 24bit(できれば32bit float)/ サンプリングレート 48kHz

【SSDやUSBメモリ(※スタジオ立ち会いをする場合)】

スタジオで納品データを受け取るために必要になります。

念のため、立ち会いの際には、収録で使う動画ファイル、ナレーション原稿、OMF・AAFデータをUSBメモリに入れて持参すると安心です。

【飲み物類(※スタジオ立ち会いをする場合)】

可能であればですが、自身や起用したナレーターへのドリンクを用意しておくと喜ばれます。その際に、喉や声帯を使うナレーターに対して配慮する場合は、冷たい刺激や浸透率を考慮して常温に近い水の方がおすすめです。

MAスタジオの予約〜作業の流れ

次は、スタジオを決めてからの作業、納品完了までの流れをご説明します。

①スタジオ予約・相談

映像、ナレーション原稿、ナレーションのイメージ、希望納期などのスケジュールをスタジオと共有し、見積りをします。

②キャスティング

実際にナレーターのボイスサンプルを聴いてみて、スタジオと相談してイメージに合うナレーターを選定します。

③整音

DAW(音声編集ソフト)に、映像や素材を立ち上げて整音。(スタジオでは、レコーディング前に預かったBGMや効果音などの音声素材の整音を行なうことがあります)

④収録

スタジオで音声を収録し、必要に応じて修正作業も行なわれます。

⑤ミックス編集

タイミングのズレ、音量調整、ノイズ除去、全体のボリュームバランスを見ながら完成形にもっていくミックスダウン作業を行ないます。

⑥完成・納品

クライアントの最終確認後、音声データを納品。

完成ファイルを受け取る際は、音楽とナレーションがミックスされた音源だけでなく、音楽の入っていない各音声トラックのデータも必ず受け取っておきましょう。

MAナレーション収録の流れ

ここでは、収録当日の流れについてご紹介します。

ナレーション原稿の変更や修正がある場合は、必ずナレーターとディレクターなどにお知らせください。

①テスト収録:ナレーターのトーンや映像と音楽とのバランスを確認します。

②ディレクション:イメージに合わせてトーンや読み方のディレクションをします。

③本番収録

④リテイク:聞き返したい箇所などを確認し、修正がある場合はリテイク(再収録)します。

⑤最終調整:BGMとナレーションのバランスを合わせながら確認します。

MAスタジオ利用の注意点やポイント

初めてMAスタジオを利用する場合は、収録予約や相談をするときにスタジオに伝えておきましょう。

料金設定がわかりにくい場合も、大切なことなので前もって気軽に問い合わせましょう!

<スタジオの予約はお早めに!>

3週間〜1ヶ月前を目安として予約しましょう。収録スケジュールに余裕がない場合、すでにスタジオの予約が埋まってしまい予約が取りづらい状況になる可能性があります。

<参加人数に応じてMAルームのサイズを選ぶ!>

自分を含め、スタジオ収録に立ち会うクライアントの参加人数が多い場合は、事前に参加する人数をスタジオサイドに伝えましょう。

<MAスタジオの使用時間は余裕を持って押さえる!>

ナレーション原稿の分量にもよりますが、短いナレーションのMA収録所要時間の目安は以下になります。

・完成尺60秒程度の収録と編集作業:2〜3時間

・完成尺3分程度の収録と編集作業:3〜4時間

まとめ

今回は、MAスタジオ収録について解説してきました。

MAスタジオは、映像作品の音に関するあらゆる作業を行なうことができるので、より高品質な音声を追求する技術を必要とする収録ではとても重宝されています。スタッフは音のプロフェッショナルです。わからないことや不安なことがあれば、積極的に相談していきましょう!

MA収録について全く知識がなかった初心者の方や、「通常収録は頼んだことあるけれど、スタジオでのMA収録って敷居高そう……」とお悩み中の方にとって、役立てていただければ幸いです。