ボイスオーバー翻訳とは?吹き替えとの違いや制作の流れを解説

映像翻訳の手法には、字幕・吹き替え・ボイスオーバーの3種類があります。そのなかでも、ニュースやドキュメンタリー、商品紹介などに適しているのが、元音声を残して翻訳音声を重ねるボイスオーバー翻訳です。

今回は、ボイスオーバー翻訳について、利用シーンやほかの翻訳方法との違いを解説します。制作の流れやポイントも紹介しているので、映像翻訳を依頼する際にご参考ください。

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ボイスオーバー翻訳とは

ボイスオーバーとは、映像の元の音声に翻訳音声を重ねる映像翻訳の手法です。おもに聞こえるのは翻訳音声ですが、元言語の音声もバックグラウンドに残っています。

ボイスオーバーは、元の発話の臨場感を維持しながら、翻訳を提供できることが特徴です。元言語の発話が始まってから翻訳音声を重ねるというルールはありますが、字幕翻訳や吹き替え翻訳と比べて字数や尺の制限が厳しくありません。外国語のニュースやインタビューをはじめ、さまざまなシーンで活用されています。

ボイスオーバーの利用シーン

近年、インターネットを中心とした動画コンテンツの普及により、映像翻訳が求められる機会が拡大しています。ここからは、どのようなシーンでボイスオーバーが選ばれているのかを紹介します。

ニュースやインタビュー

ニュースでは、海外の話題を扱うときに現地語での取材やインタビュー映像を交えることがよくあります。その際の外国語の部分については、ボイスオーバーが利用されることが多いです。

また、ナレーションとインタビューなどが混在する映像の場合、ナレーション部分は吹き替えで、その他の登場人物についてはボイスオーバー処理するといった使い分けが行われる場合もあります。

教育系コンテンツ

ボイスオーバーは、教材やセミナーなどの教育系コンテンツとの相性も良好です。ボイスオーバーには、字数や映像内の話者の口の動きに合わせなければならないなどの制限がないため、多くの情報を分かりやすく伝えるのに適しています。

また、発話者の存在が重要となるコンテンツの配信も、元の音声を残せるボイスオーバーが向くシーンです。著名なインストラクターによるレッスン動画や、外資系企業の社長メッセージの配信などにも、ボイスオーバーがよく利用されています。

企業・商品紹介

ボイスオーバーは、企業のコマーシャルやPR動画、商品紹介にも多く活用されています。

企業のコマーシャルやPR動画は、企業認知やイメージ向上に直結するツールです。グローバル企業の場合、企業ブランディングの観点から英語の音声を残せるボイスオーバーが選ばれることが多くなっています。

また、EC業界では海外展開が当たり前になりました。商品紹介動画のローカライズのニーズも高まっており、訴求力を確保しながら吹き替えよりも手軽に制作できるボイスオーバーがよく利用されています。

ドキュメンタリー形式の作品

映画やドラマなどの作品ではユーザーの没入感が求められるため、原音でそのまま楽しめる字幕もしくは翻訳を感じさせない吹き替えが用いられるのが一般的です。

しかし、ドキュメンタリー形式の作品については、ボイスオーバーが用いられることもよくあります。当事者のインタビューなどを交えることが多いため、訴求力を確保しつつリアリティを確保する意図でボイスオーバーが好まれるようです。

ボイスオーバーと吹き替え・字幕との違い

映像翻訳には、ボイスオーバーのほかに吹き替えと字幕があります。それぞれの特徴とボイスオーバーとのおもな違いを紹介します。

ボイスオーバーと吹き替えの違い

吹き替えは、映像の話者の音声を完全に消し、翻訳言語に差し替える映像翻訳の手法です。ボイスオーバーのように、元の言語の音声は残りません。

吹き替えは、話者の感情が重視される、映画やドラマなど没入感が必要なシーンに適しています。一方、ボイスオーバーは没入感よりも情報の正確性が重視される傾向が見られます。

また、吹き替えでは映像と翻訳音声に違和感が生じないよう、映像内の話者の口の動きと音声を合わせるリップシンクを行うのが大きな違いです。

ボイスオーバーでは、リップシンクは不要で、ブレスへの配慮も必要ありません(※希望に応じて対応も可能です)。原則、発話の尺や進行と合っていればOKで、制約が少ないことが特徴です。

ボイスオーバーと字幕の違い

字幕は、映像に合わせて翻訳済みの文を画面表示する手法です。

ボイスオーバーと異なり音声収録が不要なため、比較的コストを抑えられるのが魅力です。

しかし、字幕は日本語の場合、1秒に4文字以内および1行あたり13文字前後などの細かなルールがあります。そのため、ボイスオーバーに比べ、伝えられる情報量が限られることに注意が必要です。

ボイスオーバーのメリット

利用シーンや他の映像翻訳の手法との違いをふまえたうえで、ボイスオーバーには以下のようなメリットがあります。

元の音声の雰囲気を残せる

ボイスオーバーは、元の音声を消さずに残しているので、元の音声の雰囲気をきちんとユーザーに伝えられます。語調や抑揚を残せるので、より大きな訴求力が期待できるでしょう。

また、元の音声を残すことで、リアリティを担保できることもメリットです。

複雑な映像素材を必要としない

ボイスオーバーの制作では、翻訳が必要な部分は全体の音量を下げて翻訳音声を重ねる方法を取ります。そのため、基本的に元の映像の音声部分のみで制作が可能です。

吹き替えの場合は、発話を完全に翻訳音声へと差し替える必要があります。そのため、SE(効果音)やBGMが発話と異なるトラックに収録された素材が用意できない場合、新たな素材を制作しなければなりません。吹き替えよりも安価

ボイスオーバーは、翻訳時に配慮が必要なルールが吹き替えよりも少ないため、一般的に吹き替えよりも安価で依頼できます。

翻訳原稿の作成費用は、ボイスオーバーのほうが安価に設定されることが多いです。これは、ボイスオーバーではリップシンクへの配慮が不要なため、翻訳で必要な工数が少ないことが関係しています。

また、先に述べた映像素材の用意の面でも、ボイスオーバーのほうが低コストとなるでしょう。

ボイスオーバー制作の流れとポイント

ボイスオーバーの一般的な制作の流れとポイントを紹介します。

翻訳原稿の作成

まず、ボイスオーバーのための翻訳原稿の作成を行います。

映像のジャンルや内容に応じた翻訳スタッフをアサインし、翻訳作業に入ります。依頼時に元言語の原稿がない場合には、文字起こしをした上で翻訳に取り掛かります。

文書や字幕の翻訳と異なり、ボイスオーバーでは視覚に頼らない翻訳が必要です。日本語は同音異義語が多いため、ユーザーが耳で聴いて分かりやすい言葉を使って翻訳を行うことがポイントになります。言葉のリズムにも気を配る必要があるでしょう。

翻訳原稿は、タイムコードを入れ、その下に記載していきます。完成後は、専門用語や特殊用語の使用に誤りはないか、翻訳の表現が適切であるかをクライアントと確認・調整を行います。

例えば、ドキュメンタリー作品の場合は、完成前にディレクターの意見を反映させることが多いです。企業や商品PR動画の場合は、企業やブランドのイメージと合致しているかという観点から、フィードバックをもとに調整していきます。

キャストの選定・収録

ボイスオーバーの収録にあたり、キャストの選定も重要なポイントです。

ボイスオーバーでは、元言語の話者の感情や雰囲気を表現しなければなりません。映像の目的やイメージに合った表現力を持つキャストを選定してください。

速報性のあるニュースなどの場合には、収録時間もタイトにならざるを得ません。臨機応変に対応できるよう、経験豊富なキャストをアサインする必要があるでしょう。

なお、収録後は元映像とミックス・編集作業を行い、クライアントが希望する形式で納品します。

まとめ

ボイスオーバーは、吹き替えと異なり翻訳前の言語を残したまま、翻訳音声を追加します。元言語での話者の話し方や抑揚などを残せるのでリアリティがあり、ユーザーに細かなニュアンスまで伝えやすいことが特徴です。

近年、ボイスオーバーは番組制作のみならず、企業・商品のブランディングや教育系コンテンツでの活用も進んでいます。動画コンテンツの需要は今後も高まると考えられており、ビジネスにおいてもボイスオーバー翻訳が必要になる機会も増えてくるでしょう。

ワイズ・インフィニティは、ボイスオーバー制作をはじめとした映像翻訳を年間3,600本以上手掛ける翻訳会社です。

ボイスオーバー制作では、ボイスオーバー用原稿の翻訳からキャストの選定、スタジオ収録、完パケまでワンストップで対応いたします。また、必要に応じて字幕用の翻訳や焼き付け・映像編集などもご依頼可能です。

番組や広告制作会社の場合、自社でキャストやディレクター、スタジオなどのリソースをお持ちの企業もあるでしょう。ワイズ・インフィニティでは、翻訳用原稿の作成や翻訳とキャスト手配までなど、ニーズに応じた柔軟な対応も可能ですので、お気軽にご相談ください。

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