近年、グローバル化の波は映像分野にも及び、映画やドラマに限らず、動画サイトに投稿する動画やビジネスで活用されるPR動画、企業の紹介動画など、さまざまな映像で翻訳が求められる機会は多いでしょう。
なかには、企業や個人で映像に翻訳を付けたいと考える方もいるかもしれません。そこで気になるのが、「映像翻訳は難しいのかどうか」ではないでしょうか。
この記事では、外国語を翻訳する難易度とその理由をはじめ、映像翻訳と他の翻訳との違いや、映像翻訳の種類、映像翻訳の種類、ルールやコツを紹介します。
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目次
映像翻訳と他の翻訳との違い
「翻訳」と一口にいっても、その種類はいくつかあり、主に「産業翻訳(実務翻訳)」「出版翻訳(文芸翻訳)」「映像翻訳」の3つに分類されます。
産業翻訳(実務翻訳)は、ビジネス用に書かれた文書や契約書、マニュアル、特許関連書類など、企業活動に関係する翻訳を行うのが特徴です。ジャンルはITや金融、マーケティング、官公庁などの公的機関の広報などと幅広く、会社向けの資料やパンフレットなども含まれます。
出版翻訳(文芸翻訳)は、ファンタジーや純文学といった小説やノンフィクション作品、児童書、雑誌などの出版物の翻訳を行うものです。
海外で出版された雑誌や書籍が対象となるため、出版翻訳(文芸翻訳)の場合は翻訳スキルとともに高い日本語力、原語の読解力、作品の背景や作者の意図に対する理解が必要とされます。
映像翻訳は、映画やドラマ、ニュース、ドキュメンタリー、情報番組、企業の紹介動画など、幅広いジャンルの映像を翻訳し、映像に合わせて字幕や吹き替えを作成します。
また、映像翻訳には特有の翻訳ルールが定められている点は、他の2つの翻訳にはない特徴です。
映像翻訳の種類
映像翻訳の形式にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここからは、映像翻訳の種類とその特徴について解説します。
字幕翻訳
オリジナルの言語を翻訳先の言語(ターゲット言語とも)に翻訳し、音声にタイミングを合わせて文字表示する手法です。字幕翻訳には、オリジナルの音声が残るというメリットがあります。
ただし、字幕翻訳の場合、視聴者は映像と同時に字幕の文字を目で追わなければなりません。そのため、字幕翻訳では後述するルールの順守をはじめ、短時間で効率的に読める訳が求められます。
吹き替え翻訳
字幕翻訳と同様にオリジナル言語を翻訳先の言語に翻訳したうえで、映像のオリジナル言語を翻訳先の言語に差し替える手法です。
オリジナル言語の音声は流れず、映像に合わせて声優などが演じるターゲット言語の音声が流れるため字幕を追わずに内容が理解できる点がメリットといえます。
文字数制限の必要がないなど、字幕に比べルールが少ない点も特徴の一つです。ただし、吹き替え翻訳では「リップシンク」と呼ばれるオリジナル映像の唇の動きとターゲット言語の翻訳後の台詞をシンクロさせる作業を行う必要があります。
ボイスオーバー
オリジナル言語の音声を小さな音量で流しつつ、翻訳先の言語の音声を同時に流す手法です。ニュース、ドキュメンタリーでのインタビュー、ナレーションの場面でよく用いられるのが特徴です。
ボイスオーバーは、オリジナルの言語を残したまま翻訳するため、元の映像の雰囲気を残したまま内容を理解できます。加えて、完全な吹き替えに比べると比較的少ない費用で制作できる点もメリットといえます。
英語の映像翻訳が難しい理由
映像翻訳が難しいとされる理由は、翻訳に際して「ローカライズ」が必須である点といえます。
ローカライズとは、現地化、地域化という意味であり、言語の元となる国ごとに異なる文化や特性を踏まえて翻訳することが求められるのです。
加えて、英語には日本語にはない特徴や文法の違いがあります。例えば、冠詞、複数形や未来形、動詞の位置などです。前述のローカライズも含め、内容を正しく伝えるためには、これらの原語の特徴を理解したうえで適切な日本語に落とし込む必要があるでしょう。
したがって、外国語を翻訳するためには、外国語の文法と日本語の文法の違いに対応するための翻訳知識だけでなく、上記のローカライズを適切に行うための文化や習慣、価値観に関する知識が欠かせないのです。
また、たとえオリジナル言語の文章に忠実であっても、字幕の場合、長すぎると読み切れない恐れがあるため、原文の内容をおさえつつ決められた尺のなかで読み切れる字幕を作成する必要があります。
同様に、「読みやすさ」も必要です。適切な長さかつ読みやすい字幕を作成するには、後述する映像翻訳のルールの順守が重要となるでしょう。
加えて、どの種類の翻訳にも該当しますが、別の意味に取れる表現や誤解を与える表現にならないよう気を付ける必要があります。視聴者は、ひとつの表現に違和感を覚えつまずいてしまうと、以降の内容に集中できなくなってしまう恐れがあります。
そのため、原文の内容を正確に反映しつつも、わかりやすく誤解を与えない訳文を作成する日本語力が求められるでしょう。
映像翻訳の4つのルール
ここからは、映像翻訳を行う際に守るべきルールについて、基本的なものを4つ紹介します。
文字数制限
字幕翻訳の場合は文字数制限があり、以下のような一般的なルールが設けられています。
・1秒につき、文字数は4文字まで
・1つの画面につき、字幕は2行まで(1行あたり13文字まで)
上記のルールは、ストレスなく情報を読み取れるかどうかを基準に定められています。
台詞が多い場面や展開の早い作品では、字数を抑えるために工夫が必要となるケースも少なくないでしょう。
句読点は原則使用しない
字幕翻訳では、句読点は使用しません。代わりに、読点は半角スペース、句点は全角スペースで表すのが一般的です。
訳注は使用できない
産業翻訳や出版翻訳の場合、馴染みのない専門用語や固有名詞を出す場合は必要に応じて訳注を付けることが可能です。
ただし、吹き替え翻訳はその性質上使用できないのはもちろん、字幕翻訳の場合も、訳注は基本的に使用できないため注意しましょう。
日本語にはない単語や日本で認知されていない固有名詞などを表記する際は、訳注ではなくオリジナルに近い訳語に置き換える、別の表現で伝えるなどの工夫が必要といえます。
吹き替え翻訳のルール
吹き替え翻訳のルールは、原音の長さに台詞を合わせる「尺合わせ」、映像内の人物の唇の動きと台詞の音声を合わせる「リップシンク」、息継ぎの箇所を合わせる「ブレス合わせ」の3つです。加えて、発言者の口の動きだけでなく身振りも合わせるように台詞を付ける必要があります。
登場人物ごとの話すテンポ、口調に合わせることで、より違和感なくスムーズに聞き取れる吹き替え翻訳映像に仕上がるでしょう。
英語の映像翻訳を行う際のポイント ・コツ
最後に、英語の映像翻訳を行う際のポイントやコツを紹介します。翻訳を行う際は、以下の4つを踏まえて取り組むのがおすすめです。
ただし、どうしても納得いく翻訳に仕上がらない、翻訳自体の知識が不足しているという場合は翻訳会社への依頼も手段の一つとなり得るでしょう。
わかりやすく簡潔な表現を心がける
高品質で効果的な字幕翻訳には、わかりやすく簡潔な表現を心がけるとよいでしょう。
視聴者が一度で読み理解できる文字数には限りがあります。そのため、字幕は可能なかぎりコンパクトかつシンプルな表現に留めておきましょう。
非言語メッセージで内容を補完する
映像翻訳では、翻訳された言葉だけでなく映像(視覚)からも情報を得て内容を理解することが可能です。
したがって、視覚で得られる情報は省略し、伝えたい内容のみを字幕や吹き替えの台詞で言い換える「非言語メッセージでの補完」を用いるとよいでしょう。
視覚情報の省略によって字幕の長さや吹き替えの台詞の量を調整しやすくなるため、より端的でわかりやすく高品質な翻訳に近づくでしょう。
適切な言葉の言い換えを用いる
外国語をそのまま直訳すると、ときに意味のわからない文章や、日本人にはわかりづらくなってしまったりする場合があります。
その際は、日本語で適切な言葉を探し言い換えるのがポイントです。そのためには、原語を理解する力はもちろん、言い換えを自在にできる高い日本語力を磨くことが不可欠といえます。
仮に言い換えを行っても意味が伝わりにくい、誤解を招きかねない内容になってしまうのであれば、必要最小限の補足を加えるのもよいでしょう。
ストーリーや文化的な背景を汲み取る
映像内での発言を理解するためにストーリーや文化的な背景の把握が必要な場合は、それらを汲み取った上で視聴者に馴染み深い言葉・表現に置き換えましょう。文化的な背景などは国によって異なるため、直訳しても意味が伝わらない場合があります。
状況に応じた翻訳を行い発言者や映像の意図を正確に伝えるためには、ときにあえて別の表現に変更したり、意訳を加えたりするのも選択肢となり得るでしょう。
まとめ
映像翻訳は、他の翻訳にはない非言語情報の考慮も必要となるうえ、字幕翻訳、吹き替え翻訳などでは守らなければならないルールが多いため、難易度が高いと感じる場合も少なくないでしょう。
加えて、映像の内容を正確に理解し伝えるため文化的背景や価値観の把握、適切な表現に置き換えるための高いオリジナル原語の読解力・ターゲット言語の表現力が求められます。
映像翻訳を行う際は、簡潔かつわかりやすい文章や適切な表現の置き換え、非言語メッセージでの補完などを駆使すると品質の高い翻訳につながります。
また、もし現在、映像翻訳が必要な方や、自身で翻訳するのは難しいと感じている方は、ぜひワイズ・インフィニティにお任せください。
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